Very Scarlet, Bury crime

ひらり、はらり

目の前を、紅色が踊る。

この季節特有の、柔らかで少し冷たい風に撫でられた木の葉が静かな今をさらさらと囁きながら降りてくるのを、ぼくは不思議な感覚で眺めていた。

胸が騒ぐ、何処かでみたことがあるような。

頭の奥が冷える、 頬を撫でる木の葉が煩わしい。

手のひらに、赤が



「綺麗だな」

凛とした声が、前から聞こえてきた。

大きな斧を背にした黒髪の女の子。名前は。マカの友達だって言ってたけど…。

無愛想で、無表情で、あまり喋らない。近寄り難くて、接し方も解らなかったんだけど…。



「…この樹、なんて言うんだろ」
「モミジ、だ。紅の葉、と書くらしい」

ぽそりと呟いた言葉を、嫌がりもせず丁寧に拾ってくれる。つり上がる眼差しが怖いと思ってたけど…。

「…案外、普通なんだ」
「?」
「あ、いや…なんでもない」

ぷるぷると飛沫を払う犬みたいに首を振ったら、背後からラグナロクに小突かれた。地味に痛いよ…。

は、ぼくらの様子をしばらく無言で眺めたあと

ゆるり、唇を弛めた。

「…いま、わらっ…」

た、と続くはずの言葉を、の指先に挟まれた何かが優しくふさいだ。

モミジ

赤い、赤い、葉。

「…口紅みたい。クロナは、顔が綺麗だから似合うな」

今度こそ

くすくす、肩を揺らして笑う

笑うと目尻が下がって、口元に小さなえくぼが出来る。小首を傾げると、肩口で揃えた髪がさらりと揺れて…とても、可愛い。

とても、綺麗だ。



離れていく指先を引き止めようと伸ばした手から、何かがぱらりと落ちる。



さっき手のひらに取った、

樹から剥がれ落ちた一葉は、ぼくの手のひらに握り潰されてやけに赤黒く色付きぼくを睨んでいた。



それは、ぼくの身体を流れるそれとは違うけど

とても見慣れた、「それ」によく似てた。



(サワッチャダメダ)

ぼくは、狂気の剣士

(チカヅイチャダメダ)

彼女は、光りの戦士


(ワスレルナ)


ぼくは、血濡れた魔剣士

魔女、メデューサの…子供



(カノジョトハ、セカイガチガウ)



手のひらにしぶとく醜く残る葉を握り磨り潰し、腐り始めて柔らかくなった落ち葉の絨毯に叩き付ける。

耳障りな音を聞かないふりをして、頼もしい背中を追いかけた。


赤い紅いあかい、それはぼくを見つめる緋色。

深くふかくフカク、埋めてしまえ、ぼくの罪を。



-深い赤、埋める罪-


明るい場所に立つ君との

接し方が、わからない。

fin

[author: MONAKA * bg: NEO HIMEISM]