Please Please Me!



博士は仕事。
私は今、ソファーの上で寝転がっている。
博士が仕事を終えるまでの辛抱。そう思っている。
"仕事"を終えたら私をきっと構ってくれるだろう。なんて、下らない期待。

私は博士が大好きで仕方なかった。でも博士はきっと私のことなんてどうでもいいんだろう。
子供というのはこういう時に限って厄介だ。嫌に扱いが優しい時がある。
完全に子供扱いされていた。

仕事が終わるまでの辛抱、なんてそんなの。きっと彼にとっては迷惑極まりなくて。
それは子供の私の理由付けの様なものなんだ。

「博士」
「はい?」
「おやすみなさい、です」
「…おやすみ」

やっぱり止めた。構って貰えなくても結構だ。
一緒に寝てくれなんて言わないし言えない。…だって年頃の女の子だもの。

デスクに向かう博士の後ろ姿を見る。ああ、私、この後ろ姿が好きなんだ。
一つ欠伸をすると布団の中に入る。意識が遠退き、目前が霞んだ。
眠気は私をすぐに襲って、私は眠りに就いた。



一仕事終えた俺は、ソファーの上に寝転ぶ、それを見た。
ああ、眠ってる。愛らしい寝顔にふっと荒んだ心が和んだ瞬間。

「は・かせ…」
「はい?あ、寝言か」
「すき…」

一瞬、時が止まった気がした。
今まで彼女には熱烈とはいかないが何度か告白紛いなことをされた記憶がある。
俺の自意識過剰じゃなければ彼女は俺が好きな筈だった。
全く、それが今になってわかるなんて。

「夢の中でしか言えないの?」

愛なんてそんなの俺にはわからないから。だから、彼女のそれには答えてやれなかったけれど。
それも今は過去のこと。
胸が暖かくなる様な感覚に少し気持ち悪さもあったけれど。

「…夢の中じゃなくて」

言えないこともない。「愛してる」。
言葉でしか言い表せないそれを、俺が言うには早すぎる気がするし、柄じゃない。

「"俺"に言いなよ。夢の中の俺じゃなくて"俺"に」

好きだと、愛していると。
言えばいいのに(いや、何回も言われてるけれど)。

眠る彼女の頬にキスを一つ。
ああ、俺らしくない。


-さぁ僕を喜ばせておくれ-



[author: 佐久間]