これでいいんだ。
これで、全部。
Everything is okay
「…もうキムたちは行ったんだ」
空にジャクリーンの魔角灯の煙が上がっているのを見て、私もここから出るため箒を手に取る。
私は魔女と武器の間の子。
魔女だった母は同族の魔女に殺され、
武器だった父はどこに行ったか行方不明。
魔女たちの中には溶け込めず、キムとジャクリーンと一緒に武器として死武専に入った。
でも、私は魔女にも、武器にもなれない半端者。
自分の武器の力を上手く使うことが出来ず、死武専でも落ちこぼれ。
そんな時、マカたちと友達になった。
みんなは私を受け入れてくれて、一時自分が魔女の血を引いているということも忘れられた。
こんな私でも、初めて居場所が出来た。
そう思い始めたころだった。
アラクネに出会ったのは。
『アラクノフォビアに来なさい』
……え?
『私ならあなたの力を引き出すことが出来ますわ』
……でも、
『あなたの本当の居場所は、こちら側ですのよ』
……………
『そこは、あなたの居場所ではありませんわ』
…………私は、
「!」
「っ!」
声がした方を見ると、キッドがこっちに向かって走ってきていた。
きっと、私たちのことはもうバレてる。
よりによって今一番会いたくない人。
だって顔を見たら、きっと、行けなくなってしまう。
急いで、箒に跨り地面を蹴った。
そして空に浮かび上がる。
「待て!」
「来ないで!!」
キッドはベルゼブブを出して追いかけてこようとしていたけど、私は魔法で攻撃する。
嫌。本当はキッドを傷つけたくないのに。
ようやくデスシティから離れたところまで来て、後ろを振り返るとキッドはここまで追いかけてきてはいなかった。
「………これで、いいんだよね」
私は、あそこにいてはいけない。
それに、いずれにしてもキッドたちの敵になるのは目に見えていた。
キッドは死神。
私は魔女。
これで全部いいんだ。
いいはず、なのに。
「あ、れ………?」
いつの間にか、私の目からは涙が零れ落ちていた。
泣きたくないのに、ぽろぽろと涙は溢れて止まらない。
「っ……」
本当は、あそこにいたかった。
みんなの中で、ずっと笑っていたかった。
でも、みんなにも、自分にも嘘をつくのは、もう嫌だ。
「ごめんね………」
私は死武専を後にして、アラクノフォビアへ飛び立った。
end.
[author: 葉月そら * bg: 七ツ森]