僕の好きな彼女を紹介します。僕の好きな彼女は、小さな町にある学校に通っています。そんな彼女と何の接点があるのかというと、彼女は毎週日曜日に僕のいる教会へお祈りにくる人だからです。毎週日曜日しかその姿は見ることができませんが、いつもとても綺麗な方です。顔立ちが良いのはもう言うまでもないのですが、その心までもが、純真な白でできあがっているかのような方です。彼女はときどき、近くにある図書館で見受けることもあります。学校の課題があるのか、図書館にある本を見ては、それをノートに書き写しているようです。その姿を遠くから見つめているだけでも彼女のことを愛おしいと思えるのは、僕が彼女に惚れこんでいる故なのだとつくづく感じます。そんな彼女とこの間お話する機会が与えられました。彼女は、今度死武専に編入することになったそうです。彼女は、僕が担当しているこのヨーロッパ支部の近くから、引っ越してしまうのだそうです。とても、悲しいことです。僕にとって楽しかった唯一の時間さえもなくなってしまうのです。
私の好きな彼を紹介します。私の好きな彼は、小さな町にある教会にいる神父さんです。ただの神父さんならそこで終わりなのですが、なにやら世界にも数少ない「ですさいず」という死武専自慢の優秀な武器さんらしいのです。「ですさいず」というのがよくわからないので、あるとき図書館で調べてみることにしました。図書館には、たくさんの本があるので「ですさいず」というのもわかると思ったからです。まずは、大きい大きい、20巻くらいある辞書から調べてみることにしました。そこには「世界にも少ない私情最高傑作の武器」と書いてありました。まだそれでもよくわからなかったのですが、その日は学校からの帰りがけに図書館に寄った日だったので、もう図書館の閉館時間が迫っていました。アナウンスが閉館を告げていたので、わたしはそこで一旦意味調べをやめて、また暇な日に来てみることにしまいた。違う日に来ると、今度はカウンターの方に「ですさいず」について載っている本はどこですか?と聞いてみました。そのほうが、効率がいい!とこの数日で確信したからです。そうすると、カウンターの方はあっさりとその本の在りかを教えてくださいました。わたしはお礼を言ってその本を勉強席で黙読しました。重要なことは、学校のノートですが、ノートにしっかりメモしておきました。さて、「ですさいず」について理解したところで、私は彼に好意の視線だけではなく、尊敬の視線も送るようになりました。「ですさいず」。このかっこいい響きに憧れて、私は彼が「ですさいず」になるための登竜門であった死武専という学校に興味を抱きました。この学校へ進めば、もっと彼とお近づきになれるのではないかと思いました。そこで、意を決して、少しの間彼と離れるだけ!と思ってこの学校への編入を決定しました。
そして毎週日曜日に通っている、彼のいる教会へと足を運びました。その日、とても嬉しいことに彼とお話できる機会ができたので、ここぞとばかりに私について知ってもらいたいことや、私が知りたい彼のことなどをお話しました。もちろん、死武専へ編入するということもお話しました。私、神父さんの後輩になるんですね!と言うと、彼は少し悲しそうな表情を浮かべました。
彼女が死武専へ編入してしまう、イコール彼女と離れることになってしまう、という悲しみが毎日僕の寝首を掻こうとしました。彼女の姿を毎週どころか、もしかすると一生見られなくなってしまうなんて、耐え難い苦痛意外の何者でもありません。夜寝れば悪夢にうなされ、朝起きれば大量の冷や汗に悩まされ、昼彼女の姿を見かければ胸を鷲掴みにされるような痛々しい毎日を味わっているように、今となっては彼女の姿は悩みのタネでしかありませんでした。そして彼女から死武専への編入のためにこの地を発つ日取りを聞いたとき、僕は大きな大きなハンマーで自分の後頭部を強打されたような感覚を覚えました。それは、明日、という話でした。心の準備はできていたはずなのに、心臓がどんどん縮小されていくような気分です。目の前が、真っ白になりました。
死武専への編入を彼に告げてから、私はまず編入テストに向けての猛勉強を始めました。寝ても覚めても魂学やらを勉強しています。私は残念ながら武器にはなれないので、職人としてあの学校へ編入するつもりです。自分がデスサイズになれなくても、パートナーをデスサイズにする、ということが今の自分に課せた目標です。そして、死武専への編入のためにこの地を発つ一日前、最後の礼拝へ教会へ足を運ぶと、彼のほうから話しかけてきてくれました。私は飛び上がるほど嬉しかったのですが、静かな教会の中、一人大騒ぎするわけにもいかないので、心の中でステップダンスを踏むだけにしておきました。出発の日取りを聞かれると、明日だと答えました。そのあとに、彼の顔から一切の表情が消えたということを覚えています。その表情のない表情に驚いていた私には、彼の行動に注目すべき余裕がありませんでした。
「聖職者、失格ですね。僕は
行かないでくださいませんか?僕にはあなたが必要なんです」
Eyes-only (最高機密!)
それは、私の唇から彼の唇が離れて一番最初の言葉でした。
[author: 後藤和子]