Liquid
あなたの瞳は
黒曜石の様な、夜空の様な
怒りに燃える炎の様な
慈愛に満ちた流水の様な
ちらちらと、閃く様な色なのに
いつも真っ直ぐ、澄んだ色をしてるの。
靡く髪に、翻る衣服。強い言葉を紡ぐ声。
射る視線、優しい笑顔、全てを貫く勇気。
あなたは女神の様で、勇者の様で、アタシを惹き付けて止まないの。
例え女の子同士だって、例え敵同士だって
惹かれる気持ちは止まらない。
「また来たのね、魔女…アンタの魂、いただくよ!」
鋭くアタシを捉える鎌の切っ先に、身震いする。
その湖水の様な瞳で、アタシを見て・睨んで・射抜いて…。
アタシの魂を、ねぇ、あなたが食べてくれるなら
アタシは喜んで、あなたの糧になるのに。
「クルルクルクルポッポピジョッポ!」
アタシの想いと、呪いと、殺意と愛情全てを込めた呪文。
ひらひらと白い羽根が舞って、その全てが鋼の硬度を持ってあなたを襲う。
頬を掠めた一筋
ああ、その頬を彩る赤が、こんなにも妬ましいなんて。
「いい加減にっ…狩られろ!」
容赦無く振り降ろされる鎌の切っ先が、アタシを追って翻る・閃く・風を切る。
あなたと交わす、命のやり取り…たまらないわ。
「っー…ソウル!」
「おう!」
不意に聞こえた、耳障りな雑音。
あなたの側にいつもいる、目障りなオトコ。
クール気取ったニヒルなそいつが、あなたの唯一のパートナー。
悔しい
戦闘力で見劣りはしないのに。
嫉ましい
アンタなんか、ただの鎌な癖に。
羨ましい
…アタシだって、あなたの支えになりたいのに。
「このっ…!」
「あら、ごめんなさい?…でもアタシ、そんなへなちょこの太刀筋にヤられる程弱くないのよ」
からかう様に言えば、たぎる炎を燻らす、あの眼差しがアタシを射抜くの。
その快感と言ったら…
リーン、ゴーン…時計塔の鐘が、間もなくの夜明けを示唆して鳴く。
刹那の逢瀬はお仕舞い。
両腕を翼に変えて、最後にあなたの側へ
「もっと強くなって、アタシを狩りにきて…マカ=アルバーン…」
無防備な鼻先に一つ口付け
きょとんと丸まった瞳が…可愛らしくて、愛しい。
湖水に似た、夜闇に似た、甘いチョコレートに似た、黒曜石に似た
あなたの澄んだ瞳に、またアタシを映すその日まで
しばしの別れを
アタシのハニー・ムーン
end.
[author: MONAKA * bg: 七ツ森]